元教師による支援局  「教師の方へ:作文がきっかけで」

2016.05.21

校内での規律が乱れ、学校全体が落ち着かない状況での経験です。

ある学年の数名の生徒が、毎日のように授業の抜けだしや暴力的な言動、違反行為などの問題を起こしていました。

その中の一人の男子生徒の作文に感動したことがあります。

私はその学年の一クラスだけ国語を教えていました。

あるとき、「福祉」をテーマにした作文を課題に出しました。
「福祉」とは何かを説明したあとで、その生徒が質問をしてきました。

「先生、僕の妹のことでもいいのかな?」というので、「いいと思うよ、短くてもいいから書いてみたら。」と言うと、普段からあまり勉強が好きではなく、授業中の集中力にも欠ける子が、作文を書いてきたのです。

”妹が手に障害がある。手が動かない妹が可哀想でたまらない。僕が妹の代わりになりたい。”という内容でした。

そこには妹思いの優しい兄の姿が描かれていました。

私は驚きとともに、これが周りに迷惑や心配を掛けている生徒の、家での素顔なのだと感じました。

普段の行動だけではわからない、それぞれに家の事情や環境があり、いろいろな思いを抱えて生きているのだということを実感したのです。

「妹さん思いで優しいね。感動しちゃったよ。」という私の言葉に、嬉しそうに笑っていました。

こちらの考え方が変わると、彼を見る目も変わってきます。

「あなたは優しくていい子。」というような姿勢で接することができるようになり、 彼のほうの私への態度も変わり、授業の受け方も変わってきたように思います。

先日、映画館で成人した彼に、偶然に会いました。
小さな子どもたちを連れて、よく面倒を見ていました。

「あ、先生、こんにちは。」
礼儀正しい青年になっていました。

人生、いろいろあるけど、幸せになってほしいと願っています。

車いすバスケット

<福祉体験学習 「車いすバスケット」 の様子

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