元教師による支援局[教師&保護者向け]人は変われるということ(2)
2016.06.11
言葉は言霊(ことだま)と言いますが、考えや思いを口に出すことによって、行動が変わり、引いては生き方に影響を与えることがあるかもしれません。
前回に続き、教師時代に印象に残っている男子生徒のお話です。
彼は体格にも恵まれ、サッカーの得意な少年でした。
元々は芯のしっかりしたところがあったのでしょうが、中学1、2年時は学年や学級の雰囲気の中で、あまり真面目とは言えない生徒でした。
その彼が「俺、変わるから。」と宣言したのです。
当時は生活態度に問題があり、日頃から注意されることが多い生徒が数名いましたが、その中に、彼はいました。
目立って悪いことはしないものの、面倒なことはやりたくないというような今ひとつ意欲に欠けるような生徒でした。
ただ、スポーツで活躍したり、優しい面があったりしたので、友人たちからは好かれていたと思います。
中学3年生になったとき、学級委員になりました。
私から見て意外なことだったので、
「学級委員に立候補したんだって?」と声をかけたところ、「今まではダメだったけど、俺、変わるんだ。」と言いました。
人前に出ることは苦手なのに、リーダーとしてしっかりできるのか少し不安でしたが、やる気になったのは良かったと思いました。
ある日の清掃中のことです。
彼は、教室の廊下を箒で掃いていました。そこへ、掃除を怠けてふらふらしていた3名の生徒がちょっかいを出したのです。
すると、彼は「俺、学級委員になったし、真面目にやるんだ。俺、変わったから。」と言ったのです。
掃除をさぼろうと誘った子たちは、その意外な言葉にびっくりしたような表情でその場を離れました。
それまでは、あまり自己主張をせず、周囲の状況に合わせて行動していた彼が、「自分は変わる。」と言ったことを行動で示したのです。
彼は事あるごとに「俺、変わったから。」と言い、その言葉を聞いた周りの人たちは、学級で頑張る姿も知り、それを受け止める雰囲気ができてきました。
私は、学年集会でその話をしました。
「人は本気で変わろうと思えば、変われるんですね。」と。
生徒たちの目が一斉に彼に注がれ、彼の恥ずかしそうな、嬉しそうな表情が印象的でした。
その後、彼は学級や学年のリーダーとして人前に出るようになり、教師や友人たちからも信頼されて卒業していきました。
「俺は変わるから。」と宣言し、行動した彼。
”人は変わりたいときに、変わりたいように、変わることができる。”失敗したときやこのままではいけないと思ったとき、どう考えるかが大切なのだと思います。
思いや考えを、言葉に出してみる。
言葉に出すことによって、責任をもつことができ、なりたい自分に近づけるのではないかと思います。
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